妻が「レオナルド・ダ・ヴィンチ展に行ってみよう」と提案してくれたので、「製作者、表現者として良い刺激になるかもね」ということで家族で行ってきました。
http://www.museum.city.nagoya.jp/exhibition/special/past/tenji171001.html
「アンギアーリの戦い」という未完成の壁画についての展示会でした。
「レオナルドさん、この構図、なかなかやるやんけ」とアンギアーリの戦いの実物大パネルを鑑賞している娘(1歳1ヶ月)
この壁画についてはリンク先に説明があるので見ていただくとよろしいかと思います。
http://www.chunichi.co.jp/event/davinci/highlight.html
レオナルド・ダ・ヴィンチの名前についてですが、
ヴィンチ ダ レオナルド
ヴィンチ村 出身の レオナルド
こういうことらしいです。
ダンブラウンの「ダヴィンチコード」って意味わからんことになってますね。
「ヴィンチ村出身の暗号」ですよ。
ダヴィンチの部分は固有名詞として有名だからそれで良いのかも知れないけど、作家としては調査不足感が否めない。
エンジニアの私にとってのレオナルド・ダ・ヴィンチは画家というよりも ”オモシロ機械をたくさん作った人” という予備知識で、どういう人とナリなのかは全然知らずに行ってみたのですが、すごく面白い人でとても良い刺激になりました。
絵画の分野では、見たものを見たまま書くために科学的根拠にもとづいて考察を加えながら描いています。
風景を書く際に遠くのものは空気中の水蒸気によってぼやけて青白っぽくなるのを表現したり(空気遠近法)、人物や物体と空間との境目に マンガのように 輪郭線を描かず、色の層によって境界を表現する(スフマート)などを発祥させたそうです。
当時の宗教画では天使を描くときにアタマの上に光輪を描いたり、金ピカの翼を描くのが ジョーシキ だったらしいですが、レオナルド・ダ・ヴィンチは「え、飛ぶんだったら現実のトリみたいにすごい筋肉でちゃんとした羽根でしょ? 光輪?そんなもん天使だからって有るわけないでしょ。」とか言って発注主の教会の注文通りに描かずにモメて20年くらい裁判したとのこと。(どうなったか知らないけど)
ジョーシキにとらわれずに自分で調べたり考えたり実験したりで、教会の言うことが絶対的な正義だったヨーロッパで当時としては画期的な「科学的根拠」を積み重ねていった初めての「科学者」だったそうです。
人間の骨格を正確にちゃんと描きたいとか言って、人体解剖までしているぐらいです。
しかも、50代になって解剖学を学ぶために、「あなたのほうが解剖学では先輩ですから」と言って20代の若者に弟子入りするぐらいの謙虚さです。
、、、という知識はアンギアーリの戦い展で買ったこの本
のマンガの方に載っているのでゼヒ読んで欲しいです。
妻はものすごく興味を持ったらしく、あっという間に読んでしまいました。
けっこう不遇の人で、普通の人が努力によって天才と呼ばれるようになった過程が描かれています。
オモシロ機械を作った人でも有名なレオナルド・ダ・ヴィンチさんですが、これは当時のイタリアの事情が関係していました。
当時のイタリアは日本の戦国時代のようにフィレンツェの国、ナポリの国、ミラノの国みたいに分かれてて、それぞれ領主が居て、お互いにけっこう戦争をしていたそうです。
あと、こういう時代だということも合わせて知っておくと良いと思います。
http://kagakusuru.net/archives/27426/
フランスやトルコからの攻撃に備えて軍事力を高めておきたい領主に取り入るために、「わたし、こんな武器作れるんですよ」と手紙を送ったら「そんならおいでよ」と返事が来てしまったので、それから猛勉強を始めて武器などを考え始めたのがオモシロ機械を作るようになったきっかけのようです。
たくさんの 手稿 と呼ばれるレオナルド・ダ・ヴィンチの機械の設計図面が残っています。
今となっては 図面 で機械の設計をするのはアタリマエなのですが、当時は機械設計は 模型 を使って行なっていたそうです。
小さい木の模型をまず作って、それから鉄や青銅で大きく作って再現するのです。
作りかたを教えるときは、まず分解して組立てて見せる必要があり、部品を作るときも見た目でマネして作るという感じですね。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、初めて図面を描いて機械を設計した人ということになります。
しかもその製図方法を広めたのです。
現代科学技術への貢献は計り知れないものがありますね。
紙の上で機械の動作確認ができて(もちろんイメージする能力が要るが)設計を洗練させるスピードを上げ、部品を規格化することでコピー製作を容易にし、技術を積み重ねることができるようになりました。
模型だったら失われて現代には残っていなかったかもしれないですが、スケッチだったからこそ現代にレオナルド・ダ・ヴィンチの機械を復活させることが出来たのです。
この本はレオナルド・ダ・ヴィンチの図面を3Dモデルで再設計したもの。
わたしたちも昭和の手書き図面を日常的に3Dモデル化しています(笑
現代で機械を作るときは、まずコンピュータで3Dモデルを作って、ちょっと先進的な工場では図面を作らずにそのまま部品を機械加工や3Dプリンタで作ります。
あまり先進的ではない工場では2Dの図面に落としてから部品を製作します。
”中世時代は模型を作って設計していた” というフレーズを見て、「それって現代の先進的なほうみたいじゃん」と、実はかえって新鮮に感じました。
ただ、現代はテクノロジーによって3Dモデルをコンピュータ上で作れるようになったので、先述のように図面の良さと模型の良さをどちらも兼ね備えていて、中世の模型製作に逆戻りしてるわけではないんだな、と考察しました。
というわけで、アンギアーリの戦い展と、レオナルド・ダ・ヴィンチの本、おすすめです。
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