2017年02月14日

資金繰りを良くしたい



私たちより上の世代が経営している工場だと既存の資産とウデを活かして設備投資をあまりせず、省エネモードになっていれば生き残っていくことができると思うのですが、なんか私たち40歳近辺の親から会社を引き継いだ2代目世代って成長を志向してしまいます。


この中小零細の製造業っていうのは業界の構造的に、成長を志向すれば志向するほど金回りが悪くなり、借金が増えていくことになってるんじゃないか?と思ってsekasukuで分析してみました。


https://sekasuku.com/project/218 「資金繰りを良くしたい」


きっかけは「スケーリングアップ」という本の「キャッシュ」のセクションを読んだときに、すごく心に残ったところがあったからです。




DELLというコンピュータのBTOで有名な会社があります。

90年代のなかばに急成長しすぎてキャッシュが底をつき、「成長しすぎて破産する」という状況に直面しました。

運転資金を獲得するために株式を追加発行したり、融資を受けたりで資金繰りをしていましたが、そのタイミングでトム・メレディスというCFOを雇い入れました。


メレディスはDELLの財務を分析した際に、キャッシュコンバージョンサイクルを63日と計算しました。

つまり、DELLが仕入れなどにお金を使ってから、それが販売されて再びキャッシュとして銀行口座に戻ってくるまでに63日かかるということです。

この63日よりも早いサイクルで商品のコンピュータをじゃんじゃん売ると、キャッシュは売掛金に蓄積されていき、黒字であっても手持ち資金が短期的に枯渇してしまいます。


メレディスはこのキャッシュコンバージョンサイクルをどんどん改善していき、10年後にDELLを去る頃にはマイナス21日にしたのです。

つまり、仕入れなどにお金をつかう21日前に、キャッシュを受けとっておくことを意味します。

商品のコンピュータを売れば売るほど、先にお金が手元に入ってくるので手持ちの資金がどんどん増えていきます。
たとえ赤字でも手持ち資金は増えていきます。まるで魔法みたいですよね。


このキャッシュコンバージョンサイクルの改善によってDELLは株式市場や融資から資金を調達する必要が無くなったため、2013年には株式を上場廃止にして非上場にすることに成功しました。
(株式を上場しているほうが成功しているように思われがちですが、株主たちにゴチャゴチャ経営に口を出されるのがイヤなので、お金があるんだったら非上場にしたいというのが経営者の本音です)


DELLの場合のキャッシュにまつわるフローは、たぶんこんなんだったと思われます。

★DELLがお金を払っているところ
☆DELLがお金を受け取っているところ


改善前
★PCの部品を買って、自分の工場に在庫で置く
・ネットでPCの注文を受ける(在庫がない時は注文を受けられない)
・在庫の部品を組立ててPCを作る
・フィリピンとかから、船でお客さんに送る
・お客さんが商品を受け取る
・お客さんが商品の箱の中に入っている伝票で支払う
☆お金がDELLに振り込まれる

リードタイムが長いと、手持ち資金がガンガン減っていく構造ですね。


改善後
・ネットでPCの注文を受ける
☆クレジットカードで払ってもらう
・PCの部品を協力工場に発注する(在庫の確保は協力工場の責任)
・部品が届き次第、組立ててPCを作る
・フィリピンとかから、船でお客さんに送る
・お客さんが商品を受け取る
★協力工場に部品代の買い掛け金を支払う

リードタイムが長いほうが、手持ち資金がドンドン増えていく構造ですね。



上記の改善前のフローは私の想像ですが、昔からDELLで買い物をしているので、こんな感じかなと思います。

大事なポイントは、「キャッシュを先に受け取って、後で支払いをする」というところです。


この視点で自分の会社を分析してみると。。。。


201702141.jpg


左側にあるピンク色の現状問題構造ツリーをまず作っています。

UDEという気に入らないことをどんどん挙げていって、それの関連性を十分条件の論理で結んでいきます。

なぜなぜ分析の、もっとしっかりしたヤツだと思ってください。

ツリーの下のほうにいくに従って、より根本的な原因になっていきます。

完成したツリーを眺めてみると、どう見てもわが社は「キャッシュを先に支払って、後で受け取っている」構造になっていて、そのせいでモノを自由に買うことが出来ていなかったり、「仕事の規模を拡大したくない」なんていう普通の経営者は考えないような不思議な考えを持つようになっていました。


この製造業界というドメインには「何日締め 翌月の何日払い」という 掛け売り 掛け買い の商習慣があるため、ウチが外注さんや仕入れ業者に30日で支払うのに対して、お客さんから代金を受け取るのは40日後だったり45日後だったりします。

締め日に対して納入のタイミングが悪いとウチが最高70日ほど先払いになっていたり、社員さんのお給料の成果給の部分についてお客さんから売掛金を回収する前に非常に大きな金額を最高60日くらい先払いしていることが判明しました。

もちろん分析する前にも うっすら分かってはいたのですが、何日くらい先払いしているのか、どれくらいの金額なのか、ということはぜんぜん意識できておらず、手持ちキャッシュの増減がものすごく激しいなと思っていたぐらいでした。

これが、現状問題構造ツリーを書くことによって明確になりました。

大きな受注があって頑張って仕事をした月の翌月に、手持ちの資金がバッサリ無くなるなーと感じていた理由がわかりました。
(その1か月後とか2か月後にはもちろん手持ち資金が増えるのですが、白髪も増えてます。(笑))


DELLのキャッシュコンバージョンサイクル改善の話を読んで、DELLくらい大きな会社規模でもキャッシュの先払いっていうのは致命傷になりうるんだなーという気づきを得て分析して良かったです。

小規模企業だから資金繰りが厳しいってわけじゃなくて、構造が悪いと大企業でも小企業でもキャッシュフローは悪くなるんだな、と。


NHKが景気悪そうな小規模会社ばかり取材して報道するから、なんか中小は資金繰り悪そうなイメージが出来上がっちゃってたのかな?


つづきはまた今度。


posted by yoshiaki at 13:18 | 愛知 ☁ | Comment(12) | TrackBack(0) | 仕事状況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かにこの業界の商習慣、、なんとかならないものかなと思ったりしますね。ここ最近は一部企業がファクタリングで有る程度早く現金で入るようになってきていますが、、
そういえばこの前ある本で「銃を売るより銃弾を売る企業であれ」とありました。自社商品をやっているとよくわかります。
Posted by まっどだいまる at 2017年02月14日 13:39

まっどだいまるさん


>ここ最近は一部企業がファクタリングで有る程度早く現金で入るようになってきていますが、、


ファクタリングについても分析していますよ。
手数料が安ければ、有りな方法だと思います。



>「銃を売るより銃弾を売る企業であれ」


聞く人の立場によって、さまざまな意味にとれる言葉ですね。

コピー機とインクの関係のような話にも聞こえるし、ロングテールの話にも聞こえるし。

Posted by yoshiaki at 2017年02月14日 18:51
非常に興味深い話ですね。

逆に昔読んだ話だと、日本には手形がある。
これを使えば後で払える・・・

もらう方は大変ですが。

知り合いの輸入商社(零細ですが)は
本当はダメだそうですが海外のビジネス
カードで決済ししてます。
すごいポイントがたまってます。

私たちはそうもいかないですが。
輸出金額が大きい時は消費税の戻りがあると
儲かったような気がします。
実際は違いますが・・・
Posted by 大字葛飾字 at 2017年02月14日 18:52


大字葛飾字さま


はじめまして、コメントありがとうございます。


興味深い話と言っていただいてありがとうございます。

パンドラの箱を開けたような感じになっているかもしれません。

なんかお客さんに叱られそう。

まあ面白い話をブログに無償掲載したということで、目をつぶってもらいましょう。
ふつうこんな話、オープンな場所に出ませんからね。



手形については、それはそれで良いんですよ。
割って早期に現金化できるので。
厄介なのは、20日締め、翌々10日 現金払いとか。 長い!




>知り合いの輸入商社(零細ですが)は本当はダメだそうですが海外のビジネスカードで決済ししてます。

>輸出金額が大きい時は消費税の戻りがあると儲かったような気がします。


面白い話ですね。
輸入でカードは明らかに便利ですよね。仕事で使うとすぐに使用限度額に達してしまいそうですが。



消費税はいったん払って、戻ってくる仕組みなんですね。
最初から申請して非課税売上とかにできないんですか。



Posted by yoshiaki at 2017年02月14日 22:27
はじめまして、yoshiaki様

wire_pizzaと申します。
2月より加工屋を開業し、現在、商工会議所通いの経営初心者です。
資金繰りの検索でこちらに辿り着きました。

大変、含蓄のある興味深いお話ばかりで、勉強させて頂いております。
ほぼ全く顧客の無い状態からのスタートなので、不安に押しつぶされそうです。
yoshiaki様のブログを拝見して、もっと勉強せねばと勇気を頂いております。
ありがとうございます。

Posted by wire_pizza at 2017年02月17日 23:38

wire_pizzaさま


コメントありがとうございます。


資金繰りで検索すると、だいたいのページで売掛金の回収を早く、支払いを遅く、と基本みたいに書いてあるのですが、書いてあるだけで、書いてる人自身がよく分かってないと思うんです。


今回の記事は、具体的にどうして売掛金が早く回収できないのか、自分の買掛金の支払いが早くなってしまうのか、構造を分析して根本原因を特定して対策しよう!という企画でした。


それはそれとして、2月よりの開業おめでとうございます。
わたしは商工会議所に1回しか行ったことがないのですが、創業時に行くというは良いのかも知れませんね。
助けてもらえそうです。


顧客はすぐできると思いますので、そこは心配いらないと思います。


ためしにお仕事の問い合わせして見て良いでしょうか?

Posted by yoshiaki at 2017年02月18日 08:26
早速、ご返信いただきましてありがとうございます。感激しております。有難うございます。

yoshiakiさまの、何事に対しても緻密な分析と研究を行う姿勢をお手本にさせて頂きたいと思います。まだまだ勉強不足ですが・・・。

実力も実績も無いですが、お話に加えて頂けるだけでも光栄です。
ワイヤーカットが好きです。
HPを拝見しておりますが、ぜひ一度、伺ってみたいです。
Posted by wire_pizza at 2017年02月18日 09:27
wire-pizzaさま



>何事に対しても緻密な分析と研究を行う姿勢をお手本にさせて頂きたいと思います。


分析するシステム( sekasuku )を作ろうと思ったくらいですから。。。w


私自身は緻密なほうではなく、ざっくりと方向性を決めるために分析するので、ザルではないものの粗めな感じだと思います。



>実力も実績も無いですが、お話に加えて頂けるだけでも光栄です。
>ワイヤーカットが好きです。


私はマシニングが好きですw

ワイヤーカットはあんまり頻度が高くないです。
すごく難しいものとか、角窓あけたいときに利用します。



>HPを拝見しておりますが、ぜひ一度、伺ってみたいです。


客先情報機密の観点から工場内をお見せすることができないのと、コミュ障ぎみのわたしの性格からするとお会いしても

「・・・・。」

「・・・・?」

「・・・・。」

という感じになるのではないかと思います。

まあこれは冗談です。

いずれタイミングを見てお願いします。



ひとまず、なにがしかの図面を送ろうと思っています。


お取引ガイドラインはこちらです。

https://shimadakiko.com/?%A4%AA%BC%E8%B0%FA%A5%AC%A5%A4%A5%C9%A5%E9%A5%A4%A5%F3


サプライヤさま用があまり充実していませんが。。。

Posted by yoshiaki at 2017年02月19日 13:44
今晩は(^^)

スター精密の社長が、キャッシュ回転に対して理想の書物を出されてまして、根本理解しましたが…

弱者が債権とリスクを抱く構図を助長するもので、姑息な感じを受けました。

構造はおっしゃる通り
入りを計りて出ずるをで自社にはメリットですが

ステイクホルダとの利益共有観点からするとこの考えは微妙じゃないかと思います。

正直、下の立場ならここの仕事はしたくないよなと思ってしまう…



ビジネスは、ええモデルを構築し運用し、関連を含め未来に繋ぐ
そう言うのをモデルにしたいです。

描いて固まると金融機関がサポートしてくれます。
俗に言う借金ですが…

酔っ払って久しぶりのネットサーフィンで思わず絡んじゃいました(^^)
Posted by オダ at 2017年02月20日 00:57




オダさん


ご無沙汰してます。


スター精密社長の本ってこれですかね。

https://www.amazon.co.jp/%E7%A4%BE%E9%95%B7%E3%81%8C%E7%B5%B6%E5%AF%BE%E3%81%AB%E5%AE%88%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E7%B5%8C%E5%96%B6%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%9F%B3-%E4%BD%90%E8%97%A4%E8%82%87/dp/489101301X


読んでからお話ししたいところですが、なかなかのお値段しますね。


しかしオダさんがこれを「姑息な感じがする」と評価しているので、真に受けて読まなくていいかな、となりました。



オダさんは「良い未来を描く、ただし借金が増える」派なんですね。


わたしは「良い未来を描く、みんな幸せなままに」の構造を築こうとしています。



DELLがやったように、支払いのタイミングに対して敏感ではないところから早くもらうのは良い方法と思います。
PCを買う一般ユーザは、クレジットカードで払おうが、後払い伝票で払おうが気にしませんからね。
クレジットカードのほうがラクと思うくらいです。


下請け業者に対しては、支払いタイミングをとても気にするでしょうから遅く払うなんてことにはなりませんが、遅くてもあまり関係がないところとは交渉して契約していけばよいのだと思います。


相手の状況に応じて対応を変える、セグメンテーションという考え方です。




ついでにsekasukuの宣伝をしておきますと、sekasukuは「解決策はこうだ!ばばーん!」と発表するものではなくて、システム内で「ツリーのこの部分っておかしくない?」とか「この方向性で話してみよう」とかを他の人と相談しながらツリー構築していくものです。


さんざんツリー構築して話が煮詰まって、こっちのパターンでも検討してみたいとなったときに「ブランチ」を作って別パターンを考えたりも出来ます。


スター精密の社長の話をいったんツリーにしてみて、ブランチして良いところだけ取り入れて、悪いところは自分流に編集するなんて使いかたが良いかもしれません。


Posted by yoshiaki at 2017年02月20日 10:17
なんかこういう話題は身近なせいか書き込み多いですね。
そういえばコピー機とインクかロングテールかの話ですが自分はコピー機とインクの関係で書きました。一度売るとなかなか売れない物よりかは使っていくうちにたとえ利益は少しでも使っているうちはインクは出ていくので、、うちも1〜2年ごとの中のモノの張り替えは月々なかなかの売り上げになっていますしどんな使い方をされているかとか今後の商品開発の参考にもなりますから(こんなことばらしてもいいのかしら?)。
そういえば自分も久しぶりにヨシアキさんのところに伺ってみようかな、、うちのCADCAM3姉妹に他社はどういう仕事をしているか勉強させたいので。
Posted by まっどだいまる at 2017年02月20日 12:56
まっどだいまるさん


ほんと意外と書き込み多いですね。

経営者のかたは身にしみるところがあるのでしょうねw


インクのほうの話ということで了解しました。

ある程度は特殊化しておかないと、誰でも作れてコモディティ化してしまうので、そこはポイントですね。

弾丸はパラベラム弾が誰でも作れてしまうところを見ると、良くないビジネスモデルです。
なので、「弾丸を売る企業であれ」と言われると「え、ダメでしょ」となって確認したわけです。
「特殊な誘導弾を売る企業であれ」ならOKです。


まっどだいまるさんところは消耗品の側に特殊技術が施されていてマネできないので、良いビジネスモデルです。


>そういえば自分も久しぶりにヨシアキさんのところに伺ってみようかな、、うちのCADCAM3姉妹に他社はどういう仕事をしているか勉強させたいので。


残念ながら上記のコメントで書いたとおり、工場内はもう見せられないです。


Posted by yoshiaki at 2017年02月21日 12:46
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