難削材の加工が得意と公言しておりますので、いろいろ難削材の加工依頼が来ます。
とは言っても私の得意な材質はInconel718、Waspaloyなどの昔からよく加工してたニッケル基合金。
SUS304なんかは豆腐と認識しています。
あと加工できるのは割れやすい純モリブデンとか、少しずつ経験を積んできた多種多様なセラミック。
タンタルとか純タングステンなんかは業界が違うため、加工したことがありませんでした。
しかし数カ月前から純タングステンを加工せよとの強いプレッシャーが来ていました。
うちでよく加工する材料とタングステンを比較してみると引張り強度の序列は以下のような感じです。
SiCセラミック 3300Mpa HV2400 (加工できる)
超硬(タングステン カーバイド) 1600〜2500Mpa HRC80≒HV1865 (折ることなら良くあるw)
☆純タングステン 1800〜2200Mpa HRC30 (加工したことない)
http://www.nittan.co.jp/products/tungstenkyoudo.htmlハイス HRC60 (加工できる)
Inco718 1400Mpa HRC40 (余裕で加工できる)
SUS630 1310Mpa HRC40 (余裕で加工できる)
A286 1000Mpa HRC32 (余裕で加工できる)
http://xn--qckn4dud5e146u9qq.jp/article/100979352.html6Al-4V-チタン 820Mpa HRC33 (余裕で加工できる)
SUS310 627Mpa (豆腐)
SUS304 520Mpa (豆腐)
純チタン 430Mpa (豆腐)
(Mpa=N/mm^2)
引張強度と加工しやすさに比例関係があるかどうかは知らないが、タングステンはなかなか強そう。
そして加工依頼品は純タングステンのブッシュみたいなものにM3(近辺)の内径ネジを切るという、自分ではちょっとモノに出来そうもないヤツ。
タップで切るのはまずムリと早々に判断し、大先輩にヘルプを依頼したものの試験してもらってるそばから設計変更されまくりでしかも客先がタングステンはコストがうんぬん言い始めて保留されるという。。。
なんや〜と思っていたところ、別の形状の純タングステン部品の製作依頼が来ました。
納期が4日しかないので、誰にも頼らず自分で加工せざるを得ない状況。
工具より被削材のほうが柔らかいなら削れるの法則から行くと、純タングステンはHRC30程度なので普通の超硬でも削れるはずです。
なんならハイスでもイケるはず。
しかし、事前に大先輩からドリルで穴あけ加工したらドリルが折れて材料が割れたと連絡を受けていたので、なんかやる気出ず。
ダイヤモンドまではたぶん必要ないと思うが。。。
と思いながら試験用のタングステンの端材をバイスに挟んで軽く締めたら 「パチンっ・・・」
。。。わぁ〜割れてまった〜。
気を取り直してアルミの端材でタングステンの試験片をはさみ、ごく普通の超硬エンドミルで削ってみると、意外や意外、普通にキリコが出ました。
芯出し顕微鏡を使って光学で削った場所の寸法を計測してみると、工具逃げや素材割れもなく、寸法は狙い通りに出てます。
しかし加工距離がのびていくに従って加工部のバリが少しずつ大きくなり、加工場所付近に塑性変形による材料の盛り上がりが観察されました。
圧縮応力ですぐに割れるくせに、塑性変形もするんだなぁ。やはり金属の特性はあるということか。
エンドミルの刃先を顕微鏡で観察すると、素晴らしく均一な逃げ面摩耗が観察されました。
なんだ余裕じゃん。
M3メネジの加工はムリだけど、通常ミリングならなんとでもなりそうだと試験の結果から判断してバリバリと加工を実施しました。
純タングステン、制覇。
しかしM3メネジ(しかも止まり穴)はどうやって加工しましょう。。。
私の中では電着ダイヤのプラネットタップが有望ですが。
posted by yoshiaki at 00:47
| 愛知 ☁
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